第32回日本社会人選手権、ジャパンエックスボウル
6年連続10度目出場の富士通が、35―18でIBMに勝ち、3年連続4度目の社会人王座に就いた。
MVPは逆転の67ヤードTDなど、3TDを決めた富士通のRBトラショーン・ニクソン(26)に決まった。
富士通は来年1月3日の日本選手権「プルデンシャル生命杯ライスボウル」(東京ドーム)で、学生王者の関学大と対戦する
【第1クオーター】
ハガティ駐日米国大使によるコイントスに勝ったIBMが前半のレシーブを選択。富士通のキックオフで試合が開始された。
IBMはRB高木がロングリターン。自陣48ヤードからの攻撃となった。するとQB政本からWR近江へのパスでファーストダウンを獲得した。そして、高木のラン、政本のキープランでファーストダウンを更新。さらにRB鈴木が右に回り込んで走り、敵陣15ヤード地点でファーストダウンを更新した。次のプレーであわや富士通のファンブルリカバーかと思われたが、パス不成功の判定。次のTDパスは失敗したが、IBMは4分38秒、K佐藤が30ヤードのFGを決め、3点を先制した。
代わって富士通の攻撃は自陣28ヤードから。QBバードソンがWR中村へのパスで前進すると、RBニクソンが中央をすり抜け、なんと67ヤードを走りきってTD。5分36秒、K西村のPATキックも決まり、富士通が7―3と逆転した。
IBMはTEスタントンが50ヤード地点までビッグリターン。さらに政本からスタントンへのロングパスが決まり、敵陣15ヤード地点でファーストダウンを獲得した。WR白根へのTDパスは不成功の後、RB高木のランで9ヤード地点まで進んだが、QB政本が相手LB大橋のサックに捕まり、インテンショナルグラウンディングの反則。ここでIBMは7分32秒、K佐藤が36ヤードのFGを決め、得点は富士通の7―6に変わった。
富士通の攻撃は自陣32ヤードから。RBニクソンのランでは2ヤードのゲインだったが、QBバードソンがスクランブルラン。敵陣36ヤードまで進んで、ファーストダウンを獲得した。さらにニクソンのランで16ヤード地点まで進むと、最初のTDパスは不成功も、WR岩松へのパスで4ヤード前進。するとバードソンが12ヤードのスクランブルランでTDを決めた。10分17秒、PATキックも決まり、富士通が14―6とリードを広げた。
離されたくないIBMだが、ホールディングの反則で自陣17ヤードからの攻撃。ここでQB政本が走って自陣45ヤードでファーストダウンを獲得した。さらにスタントンへのパスで敵陣39ヤードまで進み、ファーストダウンを更新した。そして、政本が走り、1ヤードロスしたところで第1Qが終了した。
【第2クオーター】
IBMはQB政本からWR栗原へのパスが決まったかに見えたが、パスインターフェアランスの反則。15ヤード罰退となり、次の攻撃は続かない。
富士通の攻撃は自陣9ヤードから。IBMはDLが圧力をかけ、前進を許さない。富士通はパントを余儀なくされた。
代わってIBMの攻撃は自陣31ヤードから。WR前田へのパスで2ヤード、RB鈴木のランで1ヤードとなかなか前進できず、次の政本のパスも不成功に終わってしまう。
ここで富士通はパントをWR猪熊がビッグリターン。敵陣29ヤードまで攻め込んだ。しかし、IBMのDLが踏ん張り、ブルックスが8ヤードのロスタックルを決めた。すると富士通はバードソンがキープラン。さらにWR岩松へのパスで、敵陣16ヤード地点でファーストダウンを獲得した。ここでIBMは流れを止めるべくタイムアウト。しかし、富士通はニクソンが右エンドゾーンへ走り込んでTD。6分57秒、PATキックも決まり、得点は富士通の21―6と変わった。
IBMはキックオフリターンの間にパーソナルファウル。15ヤード下がり、自陣20ヤードからの攻撃となった。すると政本からスタントンへのパス、政本のスクランブルランでファーストダウンを獲得した。さらにRB高木へのパス、WR近江へのパスでファーストダウンを連続更新。敵陣35ヤードまで攻め込むが、その後ファーストダウンは更新できない。ここでIBMは10分42秒、K佐藤が46ヤードのFGを決め、得点は富士通の21―9となった。
富士通は自陣25ヤードからの攻撃。TE福井への10ヤードパスでファーストダウンを獲得すると、バードソンがキープランで8ヤード進んだ。前半残り時間は56秒。しかし、ここからファーストダウンは更新できず、パントとなった。
残り39秒でIBMは自陣30ヤードからの攻撃。しかし、2度の攻撃ではファーストダウンを獲得できない。ここでIBMはタイムアウトを取ると、政本のキープランでファーストダウンを獲得。さらにWR上広へのパスでファーストダウンを更新したところで、前半が終わった。
【第3クオーター】
「U.S.A.」が大ヒットしたDA PUMPとXリーグチアリーダーズによるハーフタイムショーの後、IBMのキックオフで試合再開。富士通は自陣25ヤードからの攻撃で、QBバードソンがプレーアクションパスを試みるも不成功。次はRBニクソンに走らせ7ヤード進むと、バードソンがキープラン。ファーストダウンを獲得した。するとWR森田へのロングパスが決まり、富士通は敵陣14ヤードでファーストダウンを獲得した。そして、ニクソンが連続中央突破でゴール前3ヤードでファーストダウンを更新。するとここで、バードソンからTE福井へのTDパスが決まった。3分31秒、PATキックも成功し、富士通が28―9とリードを広げた。
追い付きたいIBMはWR栗原がリターン。自陣37ヤード地点で攻撃権を得ると、QB政本からTEスタントンへのパス、WR近江へのパスでファーストダウンを獲得した。そして、敵陣39ヤードから政本から近江へのパスで7ヤード進むが、高木のランはノーゲイン。さらに政本のパスは相手LB鈴木にカットされてしまう。ここで、IBMはK佐藤が49ヤードのFGにトライするが、惜しくもポスト左に外れた。
◆富士通 LB鈴木 個人的には1年苦しかったが、最後に試合に戻れて良かった。今日はクラフトと政本に走られた。関学大QBの奥野君はけっこう走るので、ライスボウルに向けて修正しないといけない。関学大はQB3枚の併用なので、切り替えて守る。
しかし、諦めないIBMは、ここでDB小阪田がパスインターセプト。敵陣38ヤードで攻撃権を獲得した。さらにQBクラフトからWR上広へのパスでファーストダウンを獲得したかに見えたが、不成功の判定。ビデオ判定でも覆らず、プレーが進んだ。するとクラフトがスクランブルラン。敵陣12ヤードまで進み、ファーストダウンを獲得した。しかし、クラフトのTDパスは不成功。IBMは8分11秒、K佐藤が31ヤードのFGを決め、得点は富士通の28―12に変わった。
IBMは小阪田がリターナーをストップ。富士通の攻撃を自陣8ヤードからに押さえ込んだ。ここで富士通は後半1回目のタイムアウト。攻撃再開ではニクソンが19ヤード走り、ファーストダウンを獲得した。しかし、IBMは守備陣が奮起し、DB森岡が6ヤード、LB加藤が5ヤードのロスタックルを決めた。富士通はパントをせざるを得ず、攻撃権はIBMに代わった。
IBMは自陣38ヤードからの攻撃。ここで富士通はLB趙が5ヤードのロスタックルをお返しした。しかし、IBMは粘り、スタントンへのパスでファーストダウンを獲得した。ここで第3Qが終了した。
【第4クオーター】
IBMは敵陣46ヤードからの攻撃。QBクラフトがWR栗原へロングパスを試みるが、オーバーしてしまう。
富士通は自陣22ヤードからの攻撃。RBニクソンの連続ランで9ヤード進むと、RB金のランでファーストダウンを獲得した。さらにWR中村へのパスでファーストダウンを更新。そして、またもニクソンが中央突破。ファーストダウンを更新すると、バードソンが左サイドを走って、敵陣ヤードでファーストダウンを獲得した。ここでIBMはブルックスがアンスポーツマンライクコンダクトの反則。これでゴール前8ヤードに迫ると、最後はニクソンがTDランを決めた。5分3秒、K西村がこの日5本目のPATキックを成功させ、富士通が35―12とした。
◆富士通K西村 今日はチームに迷惑をかけず、仕事ができた。ライスボウルでも自分の仕事をやるだけ。経験してきたことをシンプルに再認識したい。(LBの)鈴木さんと話すが、自分たちは負けを知っている。ボウルゲームには怖さがあるので、いけいけの若い子が違う方向に行きそうになった時に、修正できればと思う。
富士通のオンサイドキックをIBMスタントンがリターン。自陣31ヤードの攻撃でWR鈴木、WR白根へのパスでファーストダウンを獲得した。そして、WR上広へのパスでファーストダウンを更新したが、QBクラフトが相手LB趙にサックされてしまう。しかし、クラフトは諦めずにパスでファーストダウンを獲得した。さらにサイドラインへのパスで時計を止めながら攻撃。白根へのTDパスも狙うが、相手DB奥田に阻まれてしまう。
攻撃の手を緩めない富士通は自陣22ヤードからニクソンが14ヤード走り、ファーストダウンを獲得した。しかし、ここでIBMはDL植村が意地のタックルを見せ、8ヤードをロスさせる。次の攻撃も続かず、攻撃権はIBMに代わった、
富士通のキック反則もあって、IBMは自陣48ヤードからの攻撃。クラフトからWR近江へのパスでファーストダウンを獲得した。何とかTDを返したいIBMは、クラフトのスクランブルランで敵陣29ヤードまで入り込むが、残り時間は1分52秒となる。ここで、IBMは第4ダウンギャンブル。WR前田へのパスでファーストダウンを更新した。富士通タイムアウトの後、IBMは残り1分26秒、クラフトがスタントンへのTDパスを決めた。しかし、2点コンバージョンのパスは不成功、得点は富士通の35―18となった。
IBMはオンサイドキックで攻撃権の維持を図るが、富士通がボールを確保。敵陣44ヤードからの攻撃に代わった。富士通はQB平本がニーダウンして、時計を進めるビクトリーフォーメーション。そのまま、勝利が決まった。
◆富士通 藤田ヘッドコーチ 3連覇の実感はないが、集中力を切らさずに最後までできた。後半の立ち上がりに良いドライブができた。毎試合こなすだけで精いっぱいだったが、(ライスボウルに向けて)まだまだ伸びしろはある。
◆富士通 WR宜本主将 ケガでプレーできなかったが、出ているメンバーを信頼し、安心していた。ランが良く出ていて、理想的なオフェンスができた。ライスボウルは負けられないので、最高の準備をする。
◆富士通 RBニクソン オフェンスラインが良くブロックしてくれたので走れた。(昨年まで守備のLBで、今年からRBになったが)元々RBをやりたかったので、元に戻った感覚がある。ライスボウル頑張ります。
◆富士通 OL小林 先を見ずに、1プレー1プレーにチーム全体が集中できた。ライスボウルでも圧倒していきたい。
◆富士通 WR中村 良い勝ち方だったとは思うが、レシーバーとしては物足りない。残り1試合(ライスボウル)でレシーバーとQBで良いパフォーマンスを見せたい。
◆IBM クラフトQB兼ヘッドコーチ 始めの2シリーズでTDが取れていたら、流れが変わっていたと思う。TDを取るのに紙一重のズレがあった。
◆IBM QB政本 (負けという)結果は結果だが、確実に去年よりは成長している。でも「勝ちに不思議はあっても、負けに不思議はない」と中谷主将が言った通り。勝つためには富士通を上回る準備、トレーニングの積み上げが必要だと思う。あと、もうちょっとやればいけた。
(日刊スポーツ新聞社 吉池 彰)