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社会人王者富士通フロンティアーズが史上最多タイの4連覇

 

1月3日に行われたアメリカンフットボール日本選手権「プルデンシャル生命杯第73回ライスボウル」は社会人王者富士通フロンティアーズが史上最多タイの4連覇を果たすとともに、5度目の日本一に輝いた。
4年連続5度目出場の富士通は、2年連続13度目の出場で18年ぶり2度目の日本一を目指した関学大ファイターズを、38―14で退けた。富士通はライスボウル無敗記録を5試合に伸ばした。関学大・鳥内秀晃監督はこの試合を最後に勇退した。
過去3度の対戦では富士通が、2015年33―24、2017年30―13、2019年52―17で勝利しており、今回も関学大の雪辱は成らなかった。
これで社会人は11連勝。対戦成績は社会人の25勝12敗となった。最優秀選手賞には、前半に勝負を決めるTDパスを決めた富士通QB高木翼(27)が輝いた。

【第1クオーター】

 歌手・島津亜矢さんの国歌独唱後、コイントス。その結果、関学大がレシーブを選択した。そして、タッチバックで自陣25ヤード地点からの攻撃となった。
関学大はQB奥野からWR阿部へのパスで6ヤード進むと、さらにWR糸川へのパスでファーストダウンを獲得した。そして、自陣42ヤードからRB三宅が走り、3ヤード前進。続いて糸川へのパス、WR三宅の19ヤードランでファーストダウンを更新した。敵陣35ヤードまで進んだ関学大。WR前田のラン、RB鶴留のランでは前進できず、奥野のパスを不成功に終わってしまう。
富士通はWR猪熊がリターンし、自陣16ヤードからの攻撃。いきなりRBグラントが走り、4ヤード進むと、QB高木からTE福井へのパスが決まり、敵陣24ヤードでファーストダウンを獲得した。ここからグラントへのパス、グラントのランでファーストダウンを更新。そして、敵陣10ヤードまで進んだ富士通はQB高木からWR強へのTDパスが決まる。6分37秒、K西村のキックも決まり、富士通が7点を先制した。

 関学大はRB三宅がフェアキャッチし、自陣25ヤードからの攻撃。QB奥野からWR鈴木へのパスで8ヤード前進した。そして、WR糸川へのパスでファーストダウンを獲得した。続く自陣39ヤードから最初の奥野のパスは、富士通OLB趙のサックを食らって不成功となり、インテンショナルグラウンディングの反則も取られてしまう。自陣26ヤードからの攻撃に代わり、改めて前進を試みるが、ゲインできない。
富士通の攻撃は敵陣42ヤードから。するとQB高木からWR松井へのパス、WR岩松へのパスで敵陣26ヤードまで進み、ファーストダウンを獲得した。さらに高木からWR中村へのロングパスが決まる。判定はゴール前2ヤードでファーストダウンを獲得だったが、VTR判定の結果、26ヤードのTDダウンとなった。10分30秒、キックも決まり、得点は富士通の14―0となった。

 

 ◆富士通WR中村 TDパスは何となく来ると思っていた。一生懸命にやる姿を見せたかった。社会人でもそうすることが魅力的で、あのプレーにこもっていたと思う。来季は富士通を脅かすチームと僕に刺激を与えてくれる選手(の出現)に期待している。でも、5連覇に向かっては土俵に乗ったところ。チームでうまくなって、その結果、5連覇できたらいい。

関学大はRB三宅がフェアキャッチし、自陣25ヤードからの攻撃。QB山中がキープランで1ヤード進むも、QB奥野のロングパスは不成功、WR阿部へのパスは成功もファーストダウンには届かない。
富士通の攻撃は自陣32ヤードから。RBグラントが走り、5ヤード進むが、WR岩松へのパスでは前進できない。しかし、WR中村への10ヤードパスでファーストダウンを獲得した。さらに、高木がスクランブルランで8ヤード進む。次に高木はパスを見せるが、富士通はパスインターフェアで15ヤード罰退してしまう。そして、WR岩松へのパスで敵陣49ヤードまで進むが、高木が関学大DL板敷にサックされてしまう。富士通のパントとなり、ここで第1Qが終了した。

【第2クオーター】

関学大は自陣25ヤードからの攻撃。QB奥野からWR鈴木へのパスで18ヤードゲインし、ファーストダウンを獲得した。さらにRB三宅のランで6ヤード進むが、続く奥野のキープランはつぶされ、1ヤードロスとなる。ここで関学大はフォルススタートで5ヤード罰退。そして、奥野のキープランではファーストダウンに届かなかったが、第4ダウンギャンブルのQB中岡のパスでファーストダウンを獲得した。しかし、交代違反で5ヤード罰退。関学大はここから、トリックプレーを見せようとするが、WR糸川がロスタックルされてしまう。さらに富士通LB趙がパスカット。続くRB三宅のランではファーストダウンを獲得できない。

 関学大の好パントで富士通の攻撃は自陣7ヤードから。RBグラントの14ヤードランでファーストダウンを獲得した。さらに自陣21ヤードでQB高木からWR中村への32ヤードパスが決まり、ファーストダウンを獲得した。ここからグラントが走るが、関学大ディフェンス陣が密集して2ヤードロスしてしまう。しかし、高木からWR松井へ18ヤードのパスでファーストダウンを獲得。さらに敵陣31ヤードから高木はグラントへパス。敵陣23ヤードまで進んだ。すると、ここで高木からWR岩松へTDパスが決まった。富士通はディレーオブゲームの反則を取られ5ヤード下がるが、K西村が落ちついてキックを決め、7分29秒、得点は富士通の21―0となった。

 

 ◆富士通QB高木翼 オフェンスラインらがしっかり仕事してくれた。1年間、目の前のワンプレーにチームとしてこだわり、自分もそうしてきた。(バードソンのケガで出場がめぐってきたのは)人生で一度きりのチャンスと思っていた。自分がMVPを取れるなんて、誰も思っていなかったと思う。うれしい。

関学大は自陣25ヤードからの攻撃。RB三宅のランで4ヤード進むが、奥野が富士通LB趙にロスタックルされてしまう。そして、奥野からWR糸川へのパスは不成功。攻撃は続かない。
富士通はWR猪熊が好リターンを見せるが、不正なブロックで15ヤード罰退。自陣37ヤードからの攻撃となった。グラントが走るが、その後のプレーで関学大LB繁治とDB三村が連続でQBサック、富士通も攻撃が続かない。
関学大の攻撃は自陣34ヤードから。奥野の2ヤードキープランの後、ビッグプレーが飛び出す。RB三宅が左サイドラインを64ヤード駆け抜けTD。11分43秒、キックも決まり、得点は富士通の21―7に変わった。
関学大のキックオフがフィールド外に出て、富士通の攻撃は自陣35ヤードから。WR岩松のランは2ヤードロス、さらにQB高木のパスも2度不成功となるが、関学大にパスインターフェアの反則があり、富士通は自陣46ヤードでファーストダウンを獲得した。そして、RBグラントのラン、QB高木のスクランブルラン、グラントのランでファーストダウンを更新した。するとグラントが中央を突破し、41ヤードのTDラン。13分50秒、キックも決まり、得点は富士通の28―7となった。
関学大は自陣25ヤードからの攻撃。QB奥野からWR糸川への22ヤードパスでファーストダウンを獲得した。関学大はここで前半1回目のタイムアウト。自陣47ヤードからの奥野のパスは富士通DB大貫にパスカットされるが、続くWR鈴木への17ヤードパスでファーストダウンを獲得した。しかし、この後、富士通LB竹内がパスインターセプト。攻撃権を得た富士通はニーダウンして時計を進め、ここで前半が終了した。

◆富士通LB竹内修平 LB裏へのパスが多かったので、どこかに飛んでくると思っていた。去年もああいうフワッとしたパスをインターセプトしていたので、来ると思っていたら来た。たまたま良いところにいた。来季はもっと強いチームになって、日本のフットボールのレベルを上げていきたい。

 

【第3クオーター】

 富士通のレシーブで後半の試合再開。WR高津佐が自陣41ヤードまでリターンした。するとRBグラントの18ヤードランでファーストダウンを獲得した。さらにグラントが走って5ヤード進むと、今度はRBデレクアキラの連続ランでファーストダウンを連続更新した。ボールはゴール前2ヤード。しかし、QB高木が関学大LB海崎にロスタックルとQBサックを浴びせられた上、パスカットされ、TDには至らない。それでもK西村が32ヤードのFGを成功させ、3分27秒、得点は富士通の31―7に変わった。

◆富士通K西村豪哲 後半1発目のシリーズで、TD取れそうなところで下がっていって、点を取りきって終わるか、0で終わるかで、その差は大きかった。ラッシュは厳しかったが、自分自身は乱されずにいつもと同じことをやった。「ベテランになればなるほど悪い記憶が消せなくなる」と丸山茂樹さんに言われたことがあるが、過去にオービックに勝てなかった印象が強い。未だに自分はチャレンジャーだと思っている。

 関学大は自陣25ヤードからの攻撃。RB前田のラン、奥野からWR河原林へのパス、キープランでファーストダウンを獲得した。続く奥野のパスは失敗したが、RB三宅のラン、奥野から三宅へのパスでファーストダウンを更新した。次の奥野のパスはラッシュを浴びて失敗も、さらなるWR糸川へのパスは成功。するとRB鶴留の14ヤードランでファーストダウンを獲得した。そして、敵陣27ヤードからWR前田が走り、7ヤード進むと、RB三宅のランでファーストダウンを更新した。続くスペシャルプレーは14ヤードロス。続く奥野のパスもロスしてしまう。

 

 関学大はまた好パントを見せ、富士通の攻撃は自陣1ヤードから。するとRBデレクアキラが最初のランで2ヤード、続くランでは40ヤードをゲインして、ファーストダウンを獲得した。そして、RB金のラン、QB高木のキープランでファーストダウンを更新して、ボールは敵陣46ヤード。ここで富士通が後半1回目のタイムアウトを要求した。次のプレーはRBデレクアキラのラン。4ヤード進むが、続く高木のパスは失敗。さらに高木が関学大DL大竹にサックされてしまう。
攻撃権を得たかに見えた関学大だったが、パントをファンブルし、富士通DB佐藤にリカバーされてしまう。富士通の攻撃は敵陣19ヤードから。ところが、富士通はホールディングの反則で10ヤード罰退してしまう。ここで第3Qが終了した。

【第4クオーター】

 富士通は敵陣29ヤードからの攻撃。QB高木からWR松井へのパスで進むと、高木からWR強への14ヤードパスでファーストダウンを獲得した。そして、ここからRB金の5ヤードTDランが決まった。1分17秒、キックも決まり、富士通のリードは38―7に変わった。
関学大はRB三宅のリターンで自陣35ヤードからの攻撃。するとQB奥野から三宅への33ヤードパスでファーストダウンを獲得した。ボールは敵陣32ヤード。しかし、RB前田の中央突破のランでは1ヤードロス、奥野のパスは敵ラッシュを受けて失敗となり、QB中岡のランもロスタックルされてしまう。関学大はここで後半1回目のタイムアウト。第4ダウンギャンブルを選択したが、奥野のパスは富士通DBアディヤミに阻まれてしまう。
富士通は自陣38ヤードからの攻撃。RB金のランはロス、QB平本のパスは連続カットされ、攻撃は続かない。
関学大は自陣16ヤードからの攻撃。QB奥野はラッシュを受けながらもWR阿部への16ヤードパスを決め、ファーストダウンを獲得した。しかし、続くリバースプレーは富士通LB山岸に止められてしまう。そして、奥野からWR鈴木へのパスも失敗に終わる。

 ◆富士通OLB山岸明生(関学大OB) 関学のスペシャルプレーは、やってくると分かっていて止められないものがあった。でも、あそこは走ってくるのが見えた。それなりのディフェンスで良いところを見せられたと思う。鳥内監督には「上に行くためにはどうしたらいいのか考え、やり続ける」ということを教えていただいた。恥ずかしいプレーはできなかった。社会人とはこういうものだというものを見せ、全力を出して勝つことができた。

富士通は自陣42ヤードからの攻撃。QB平本のキープランで前進後、RBデレクアキラがランを見せるが、ホールディングの反則で10ヤード罰退。さらに平本がDB北川にロスタックルされてしまう。それでもRBデレクアキラの20ヤードランでファーストダウンを獲得すると、平本からWR猪熊への29ヤードパスでファーストダウンを更新した。ボールオンは敵陣15ヤード。しかし、続く平本のパス、RB金のラン、RBデレクアキラのランでは前進できず、K大塚の37ヤードFGトライも失敗に終わった。
関学大は自陣20ヤードからの攻撃。奥野からWR鈴木へのパスでファーストダウンを獲得した。しかし、続く奥野からWR阿部のパスは不成功。さらなるパスも失敗してしまう。そして、第4ダウンギャンブルは奥野からRB鶴留への21ヤードパス。これが見事成功し、ファーストダウンを獲得した。さらに奥野のスクランブルランで進み、残り試合時間は2分あまり。すると奥野のキープランでファーストダウンを獲得した。さらにWR阿部から鶴留への9ヤードパスと鶴留ランでファーストダウンを更新した。そして、残りは1分8秒。続くプレーで富士通にパスインターフェアの反則があり、ボールはゴール前9ヤード。関学大はRB三宅のランで5ヤード進んだ。タイムアウト後、奥野のTDパスは富士通DB佐藤がカット。しかし、残り43秒からの攻撃で奥野からWR鈴木への4ヤードTDパスが決まった。試合時間残り38秒、キックも決まり、得点は富士通の38―14に変わった。

 その後、関学大はオンサイドキックしたボールをWR阿部が押さえて、攻撃権を維持。すると奥野からWR鈴木への30ヤードパスが決まり、敵陣17ヤードでファーストダウンを獲得した。残りは28秒。関学大はパスをスパイクして時計を止め、第2ダウン。奥野からRB三宅への7ヤードパスが決まったところで、関学大は3回目のタイムアウトを取る。残りは17秒。奥野のパスは失敗し、残りは12秒。第4ダウンギャンブルで奥野から糸川へのパスが決まり、ファーストダウンを獲得した。パスをスパイクして時計を止め、残りは5秒。しかし、最後のRB三宅のランは富士通LB鈴木が止め、ここで試合が終わった。この結果、富士通が4年連続5度目の日本一の座を獲得した。

 

 ◆富士通OLB鈴木將一郞 最後のプレーは控えメンバー中心で、オンサイドキックを決められたが、ダラダラしたくなかった。関学さんはあそこからの裏プレーがある。ブロッカーが下にもぐり込んでいたので、それに付き合うようにした。フィールドに出た時には何か良いプレーがしたかった。最後締めくくれたのは良かった。来季は41歳になるが、オービックさんに4連覇で並んで、塗り替えられのは僕らしかいない。ずっとオービックさんに苦汁をなめさせられ続けてきたので、乗り越えたい気持ちがある。

◆富士通・山本洋ヘッドコーチ 選手が良くやってくれた。用意したゲームプランをしっかりプレーしてくれた。春から通してバックアップメンバーの底上げを図った。そのバックアップメンバーがスタートのメンバーと変わらない力を発揮してくれたのが、この結果につながったものと思う。

 

 

 

 ◆関学大・鳥内秀晃監督 こっちがミスしたらダメ。パスいかれたのもアジャストミス。ああいうところをちゃんとやらんと勝負にならん。故障者だらけで体力的にしんどかった。最後のワンプレーは取りたかったが、甘かった。

◆関学大DL寺岡芳樹主将 中途半端な努力じゃ勝てへんというのが結果に表れた。前半あんだけ突き放されて、後半あがいた。最後は自信あるプレーだったのに、決められへんかったのは甘かった。後輩にはそれぞれの自分自身が本気でチームを勝たせる思いで行動してほしい。この悔しい思いを持って、ここで勝つ気持ちでやってほしい。

◆関学大QB奥野耕世 もっと細かいところまで、いろんな準備ができたら良かった。それでも、パスラッシュは感じずにできた。空いているところは空いていた。最後のシリーズでタッチダウンを取りたかったが、自分自身としては去年より気持ちよくプレーできた。社会人との差はあったが、勝負できるところはあった。来季は4回生になるので、経験してきたものをしっかり後輩に伝えたい。

試合記録はこちら

(日刊スポーツ新聞社 吉池彰)