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ライスボウル2018の見どころ

★ライスボウルでは過去全勝同士の初顔合わせ。

アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯「第71回ライスボウル」は1月3日午後3時、東京ドームでキックオフされる。

対戦は、2年連続3度目の出場で2年連続3度目の優勝を狙う富士通フロンティアーズと、27年ぶり5度目の出場で27年ぶり5度目の日本一を目指す日大フェニックス。8年連続で社会人が勝利しているが、今回の初顔合わせではどうなるか。

これまで出場したライスボウルでは、日大が4戦、富士通が2戦ともに負けなし。どちらが全勝記録を伸ばすか、注目される。

★日大1年生エースQB林大希と富士通守備陣との対決が最大の注目

日大27年ぶり甲子園ボウル優勝の原動力となり、史上初めて1年生で年間最優秀選手賞チャック・ミルズ杯に輝いたエースQB林大希が、社会人王者相手に力を発揮できるかが、最も注目される。

林大は甲子園ボウルでは、パスで128ヤードと1TD、ランで113ヤードを獲得。大会MVPも受賞した。パスとランのバランスが良く、スピードもある。「学生には体力があり、(練習)時間がある。甲子園のようにシンプルなことを出せたら、社会人相手でもいける」と今回も粘り勝ちを狙っている。

林大には日本協会・国吉会長も最大限の期待を寄せる。「新しい日本の学生のスターで、4年続けてミルズ杯を取ってほしいと本人に話した。牛若丸・林と弁慶・富士通の対決が楽しみ」と12月19日の大会記者会見で熱弁を振るった。

「弁慶」と表された富士通ディフェンス陣。その圧力の強さはXリーグでも屈指と言える。2017オールX年間最優秀ディフェンスにも選ばれたLBニクソン、DBアディヤミを軸に、DL古木、LB竹内、DB樋田らが固める布陣は鉄壁とも言える。ジャパンXボウル(=JXB)でQBサックを決めた竹内は「迷いなくプレーできる時が良いので、無心で思い切りやる。1年生QBにブリッツとかを決めたい」と手ぐすね引いている。

★富士通QBキャメロン―WR中村のホットラインを日大が止められるか

JXBでは、富士通QBキャメロン―WR中村のホットラインが猛威を振るった。とくに中村は203ヤードを獲得し、大会レシーブ記録151ヤードを19年ぶりに更新、大会MVPに輝いた。圧巻だったのが第2Qの74ヤードTDパス。あうんの呼吸で決まったビッグプレーで観客の度肝を抜いた。中村は「母校とやれるのはいろんな思いがあるが、オフェンスで頑張る」と日大・内田監督への”恩返し”を狙う。

そんな中村について内田監督は「学生時代は”練習やれ”と言うとふてくされることもあったが、今は中心的選手になった。彼は今のチームに合っている」とその成長ぶりを警戒する。

 

中村を成長させたのは、中村が「人生を変えてくれた」とまで評したキャメロン。JXBではパスで306ヤード4TD、ランで81ヤード2TDと大暴れした。ライスボウルでは2年連続MVPを狙う。

 

迎え撃つ日大は主将のDL山崎(4年)を中心に、「気持ちで折れない」ディフェンスでぶつかる。「今年は1月9日から全体も、パートも昨年の3倍の練習をした。それに加え毎日2500ヤードを走ってきた。スピードは富士通の方があるが、持久力で勝つ」と気合は十分。主将として「つらい時があったからこそ、ここ(東京ドーム)に立てる。自信を持て」と日々、選手たちを鼓舞している。

山崎のうしろにはLBのモーゼス(3年)と楠井(楠井)、DBのブロンソン(4年)が包囲網を敷く。「この3人が活躍するにはDLがしっかり役割を果たさないといけない。学生らしく思い切りやる」と山崎は気をたぎらせている。

★両チームともにOL陣のデキが得点のカギを握る

日大・林大、富士通・キャメロン。両QBにスポットが当たるが、それを生かすも殺すも、OLのデキ次第と言える。

日大は副将のG加倉井(4年)が「ベースとなるランを出すため、しつこくブロックし続ける」と闘志を燃やす。「最後まで足が動くのが今年のOLの長所。去年とは練習量が違うので、1人1人に自信がある。とんでもない状況でも、自信を持ってやれる」と胸を張る。「かっこいいブロックはできなくても、一瞬のスキを突いて、林やRBの3人が走ってくれると信じている」と、昨年までとは違う、常にポジティブな姿勢で立ち向かう。

 

富士通はJXBでOLが奮戦した。IBM強力ディフェンス陣の動きを封じ、QBサックはゼロ。ロスタックルもわずか3本に押さえ込んだ。藤田HCは「オフェンスラインがコービー(キャメロン)に仕事をさせてくれ、ランナーの走路を開けてくれた」とその健闘をたたえた。そして、ライスボウルに向け「OLにはJXBと同じ仕事を期待している。しっかり準備する」と社会人横綱らしく、どっしりと構えた。

★スペシャルチームの働きがチームに勢いを与える

ODK(オフェンス、ディフェンス、キッキング)のバランスが、最後にはものを言うアメリカンフットボール。その中でスペシャルチームの代表格と言えるキッカーの出来、不出来が試合の流れを左右すると言っても過言ではない。

それを証明したのがJXBでの富士通K西村。今季のオールXで4年連続6度目の受賞を果たした32歳のベテランは、9度のPAT(TFP)キックを全て成功させ、チームがつかんだモメンタムをIBMに渡さなかった。「TFPは(攻撃の)勢いを維持するためのもの」と言う西村。激しい相手のラッシュにも、味方のブロッキングもあって動じることなく、ボールを高く蹴り上げた。ライスボウルでの姿勢は常にチャレンジャー。「相手に関係なく、しっかりパフォーマンスを出す」と約束した。

一方、日大は甲子園ボウルで見事なパントを見せた。LBも兼ねる楠井が第2Qにボールを敵陣1ヤードまで押し戻すと、第4Qには第4ダウンギャンブルと見せて、QB林大が絶妙のパント。またも、関学大を自陣1ヤードからの攻撃に押し込んだ。練習に裏打ちされたプレーで、ライスボウルでも、その再現を狙う。

 

そして、忘れてならないのがリターナーの存在。JXBの試合開始と同時に飛び出した富士通WR猪熊の99ヤードキックオフリターンTDは、IBMファンの悲鳴を誘った。「常に1発しか狙っていない」という40ヤード4秒43の俊足。「1年前まで(立命大の)学生だったが、学生には負けたくない」と気合を入れる。そんな猪熊を例に日大・内田監督は「富士通の選手は高校時代から見ているが、大人のフットボールをやっている」と警戒した。

★日大・内田監督VS富士通・藤田ヘッドコーチ。男の気持ちがぶつかり合う

「日大QBの林君がすごいと聞いている。まだ映像を見ていないので、見るのが楽しみ」と富士通・藤田HCは記者会見で報道陣を煙にまいた。さらに「日大は練習で裏付けられた芯のあるチーム。うまくて速くて強い」と評したが、慌てる様子はない。

富士通は過去2度出場のライスボウルで、いずれも全勝で勝ち上がってきた。しかし、今回はリーグ戦でパナソニックに9―24で完敗後、チームを立て直した。「自分らがうまくいかないことが分かり、勉強になった」という藤田HC。JXBではそれまでのケガで離脱していた選手も戻り、ライスボウルでの今季のチームの完成を目指している。会見で藤田HCは「全選手が細かいところでうまくなれると思う」と2週間での成長に自信を見せた。

対する日大・内田監督は「スペシャルプレーは好きじゃない。練習量で、持久力で、動いて勝負する」と選手の若さを武器に、富士通にガチンコでぶつかる覚悟を見せた。「タックルにいって届かない時とかに、選手が下を向かないようにしたい」という内田監督。そうした気持ちの面で期待するのが主将のDL山崎と副将のLB谷口という4年生。とくにベンチで鼓舞する谷口の動きをポイントに挙げた。

 

27年前までの日大黄金時代を築いた篠竹幹夫監督(2006年死去)の後任として2003年からチームを引き継いだ内田監督。甲子園ボウル4連敗後、一度監督を退いたが、今季復帰し、QB林大らの1年生NEWパワーもあって、甲子園で感涙にむせんだ。「自分なりに篠竹監督の教えを生かす」と内田監督は”ネオ篠竹イズム”で、ライスボウル5戦5勝を狙っている。

                    (日刊スポーツ新聞社 吉池彰)