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第70回ライスボウル富士通が2年ぶり2度目の優勝 詳細レポート

<アメリカンフットボール:日本選手権 プルデンシャル生命杯第70回ライスボウル:富士通30―13関学大>◇3日◇東京ドーム

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社会人王者富士通フロンティアーズが2年ぶり2度目の日本一に輝いた。出場2年ぶり2度目の富士通は、2年ぶり11度目の出場で15年ぶり2度目の日本一を目指した関学大ファイターズを、30―13で退けた。

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2年前の対戦でも富士通が33―24で勝利しており、関学大の雪辱は成らなかった。これで社会人は8連勝。対戦成績は社会人の22勝12敗となった。最優秀選手賞は富士通のQBコービー・キャメロン(26=米ルイジアナ工科大)が獲得した。

【第1クオーター】

コイントスに勝った富士通がレシーブを選択。そしてアメリカンフットボール国会議員連盟会長・麻生太郎副総理の始球式後、キックオフとなった。

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富士通はWR中村がリターンし、自陣25ヤード地点からの攻撃。最初はQBキャメロンからWR強へのパスで12ヤード前進後、RBゴードンの3ヤードランで自陣40ヤードまで進んだ。そして、続くランは1ヤードロスも、WR中村へのパスで敵陣45ヤード地点まで進んだ。さらに、ゴードンの連続ランでファーストダウンを更新。しかし、その後にキャメロンがWR岩松へTDを狙ったパスは不成功、WR中村へのパスも不成功となる。だが、ここでK西村の49ヤードのFGが決まり、3分10秒、富士通が3点を先制した。

◆富士通K西村豪哲 35ヤード付近のプレーを見ていて、(FGトライが)来るかと思った。長いので振り抜いて蹴るだけだった。割り切ってできた。(FG成功を)チームが力にしてくれて良かった。今季はリーグ最初のIBM戦後、右足が踏み込めないくらいの痛みが走った。病院で骨の成長障害と言われた。本数を蹴った疲れが出たためだが、痛み止めを打って、(社会人)準決勝くらいからできるようになった。今季はケガで辞めようかとも思ったが、来季はシーズンを通してパフォーマンスを維持してやりたい。

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代わった関学大はWR岩永がリターンし、攻撃は自陣26ヤードから。しかし、エースRB野々垣のランは2ヤードにとどまり、続く攻撃ではQB伊豆がスナップをこぼしてしまう。

富士通はパントをRB神山がフェアキャッチし、50ヤード地点からの攻撃。5ヤード前進後、WR秋山へのパスで16ヤード進み、ファーストダウンを獲得した。そして、敵陣25ヤードからRBゴードンが走り、ファーストダウンを更新した。その後、キャメロンがWR中村へTDを狙ったパスは不成功、ゴードンのランも前進は3ヤード、キャメロンのスクランブルもノーゲインとなったが、8分15秒、K西村が28ヤードのFGを成功させ、富士通が6―0とした。

関学大は自陣35ヤード地点からの攻撃。3ヤード前進したが、QB伊豆のパスは連続不成功。関学大は第4ダウンギャンブルの構えからパントし、陣地を押し戻した。

富士通の自陣13ヤードからの攻撃に変わり、QBキャメロンがWR岩松へのパスでファーストダウンを獲得した。さらにWR福井へのパスでファーストダウンを更新。続くWR中村へのパスで8ヤード前進した。そして、RBゴードンへのパスでファーストダウンを更新。そして、敵陣30ヤードまで進んだ富士通は、12分41秒、QBキャメロンからWR中村へのTDパスが決まり、13―0とした。

◆富士通WR中村輝晃クラーク TDを取れたのは、自分でプレッシャーをかけたのがプラスに出た。日頃の練習や試合の場合を考えながら、(相手)ディフェンスを見て、コービーなら来るかなと思った。ただ、ファーストシリーズでTDまでいけなかったのは今後の課題になる。

何とか得点したい関学大は自陣18ヤードからの攻撃。QB伊豆からWR前田への2度目のパスで5ヤード前進すると、伊豆のスクランブルでファーストダウンを獲得した。そして、RB野々垣のランで6ヤード進むが、続く攻撃では、RB加藤が富士通DB善元に2ヤードのロスタックルを食らってしまう。ここで第1Qが終了した。

◆富士通LB鈴木一郎主将 善元は母校との対戦で思いもひとしおだったと思う。攻めのディフェンスをしてくれた。

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【第2クオーター】

関学大は意表をついたOL蔵野のラン後、第4ダウンのパントフォーメーションから、WR小田が走って自陣43ヤードまで進み、ファーストダウンを獲得した。しかし、ここで富士通DBアディヤミにインターされそうになり、攻撃は続かない。

富士通は絶好の敵陣48ヤードからの攻撃。しかし、ここでホールディングの反則で10ヤード罰退してしまう。ここで、富士通はQBキャメロンからRBゴードンへのパスで6ヤード前進。そして、ゴードンのランで敵陣43ヤードまで進むが、その後は関学大DB岡本にその後の前進を阻まれてしまう。

関学大は自陣8ヤード地点からの攻撃。RB橋本のランで9ヤード前進した。そして、橋本の連続ランでファーストダウンを獲得。さらにRB加藤のランで4ヤード進むと、橋本が中央突破し、ファーストダウンを更新した。自陣40ヤードまで進んだ関学大は、代わったQB西野からWR松井へのロングパス。しかし、不成功となり、戻ったQB伊豆がLBニクソンにサックされてしまう。これで14ヤードロス。やむなく関学大はパントを選択した。

富士通の攻撃は自陣29ヤードから。ここでまた、ホールディングの反則で10ヤード罰退した。WR強へのパスが不成功となると、富士通はさらにフォルススタートの反則。5ヤード罰退となった。そして、続くパスも不成功。WR強へのパスではファーストダウンを獲得できない。

関学大の攻撃は自陣44ヤードから。ここでQB伊豆からWR前田へ12ヤードのパスが成功。ファーストダウンを獲得した。続くパス攻撃でWR松井が負傷退場してしまう。すると、伊豆がタックルをかわして3ヤード前進。第4ダウンギャンブルを試みるが、QB伊豆がLB高崎にサックされ、11ヤードロスしてしまう。

富士通は50ヤード地点からの攻撃。RBゴードンのランで1ヤードロスしたが、11分48秒、キャメロンからWR中村へ51ヤードのTDパスが決まった。K西村のキックも成功し、富士通が20―0とした。

◆富士通QBコービー・キャメロン いつも練習で正確さを心がけていたが、何とかうまくいった。

◆富士通WR中村輝晃クラーク もっと外側へ落としてもらうはずだった。でも日頃からボールに寄る練習をしていたので、しっかり寄れた。足もしっかり動いていて良かった。

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前半残り3分4秒で、関学大は自陣27ヤードからの攻撃。QB伊豆から前田への連続パスでファーストダウンを獲得した。さらに前田へのパスでファーストダウンを更新、敵陣29ヤードまで進んだ。1ヤードロス後、関学大は伊豆のスクランブルで5ヤード前進。しかし、次のスクリーンパスは不成功。ここで関学大は前半1回目のタイムアウトを要求した。そして、関学大は第4ダウンギャンブル。しかし、伊豆からエンドゾーンへ走り込んだWR亀山へのパスは不成功となった。

富士通の自陣25ヤードから攻撃に変わり、RBゴードンが4ヤード走ったところで前半が終了した。

【第3クオーター】

関学大のレシーブで試合再開。WR池永が自陣15ヤードまでリターンした。ここからQRB野々垣のランは前進2ヤード。WR加藤が7ヤード進むと、RB橋本が同35ヤードまで走り、ファーストダウンを獲得した。ここで富士通LB海島が負傷退場となると、関学大はフォルススタートで5ヤード下がる。しかし、QB伊豆の17ヤードキープランで自陣47ヤードまで進み、ファーストダウンを更新した。そして、RB加藤のランの際、両チームにアンスポーツマンライクコンダクトの反則が発生したが、相殺。するとQB伊豆が富士通LBニクソンにサックされ、7ヤードロスしてしまう。

富士通の攻撃に変わり、自陣13ヤードから。QBキャメロンからWR中村へのパス、RBゴードンのラン攻撃では合計4ヤード前進にとどまったが、キャメロンのスクランブルでファーストダウンを獲得した。さらにゴードンの3連続ランでファーストダウンを2度更新後、QBキャメロンから中村へのパスで敵陣28ヤードまで進む。さらにWR岩松へのパスで敵陣16ヤードへ。そしてRB高野橋のランで3ヤード進むと、キャメロンが1ヤードキープラン。TDを狙ったパスは関学大DB横沢阻まれてしまうが、ここでK西村の29ヤードFGが決まり、8分57秒、富士通が23―0とリードを広げた。

関学大は自陣35ヤードからの攻撃。RB野々垣が6ヤード走ると、RB加藤は1ヤード、RB橋本が敵陣44ヤードまで進んでファーストダウンを獲得した。さらに、野々垣のランでファーストダウンを更新。敵陣26ヤードまで攻め込んだ。そしてWR池永へのパスでゴール前9ヤードへ。すると、橋本が6ヤード走って、残りは3ヤード。最後も橋本が中央を突破し、関学大が13分50秒、TDを決めた。しかし、続くパス攻撃は富士通DB善元にストップされ、得点は富士通の23―6となった。

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◆RB橋本誠司 ラインの外側を攻めて走るプレーは指示されていた。タッチダウンの場面では、取るしかないと思っていた。一発で取れてうれしかった。最後にパフォーマンスをフルに発揮できた。ただ、富士通は組織でのディフェンスの寄りが速くて本当に強かった。

関学大はオンサイドキックで攻撃権の維持を図るが、ボールを確保できない。富士通の敵陣45ヤードからの攻撃に変わり、QBキャメロンの最初のパスは不成功となるが、WR岩松へのパスで8ヤード前進した。すると14分55秒、キャメロンからWR福井へ37ヤードTDパスが決まった。K西村のキックも決まり、富士通の30―6。そして、関学大がキックオフリターンしたところで、第3Qが終わった。

【第4クオーター】

何とか意地を見せたい関学大は、自陣14ヤードからの攻撃。QB伊豆からWR前田へのパス、RB野々垣のランでファーストダウンを獲得した。そして、自陣29ヤードから、前田へのパスで自陣42ヤードまで前進。さらにWR池永へのパスで敵陣30ヤードまで進んだ。しかし、池永がランで2ヤード進んだ後、RB野々垣のランは4ヤードロス。その後の第4ダウンギャンブルのパスは失敗してしまう。

富士通の攻撃は自陣32ヤードから。QBは平本に代わり、RB高口のランで14ヤード進むと、さらにRB高野橋のランで敵陣43ヤードまで進んでファーストダウンを獲得した。しかし、その後、パスインターフェアの反則で15ヤード罰退。平本のキープランで9ヤード進むが、高口のランではファーストダウンを獲得できない。

試合時間残り8分49秒となって、関学大の攻撃は自陣28ヤードから。RB橋本のランは1ヤードロスとなるが、QB伊豆からWR亀山へのパスでファーストダウンを獲得した。さらに5ヤード進むと、RB野々垣のランでファーストダウンを更新した。そして、50ヤード地点からQB中根キープランは1ヤードに止まったが、伊豆から亀山へのパスでファーストダウンを更新した。敵陣27ヤードまで進むが、RB加藤のランは5ヤードロス。ここで伊豆がキープランで11ヤード前進した。そして、関学大は第4ダウンで敵陣19ヤード地点からRB橋本のラン攻撃を見せるが、ギャンブルは失敗に終わった。

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残り4分10秒で富士通の攻撃に代わる。RB高野橋のランでファーストダウンを獲得したが、高野橋は3度目のランでファンブル。関学大DL三笠にリカバーされてしまう。

関学大の敵陣48ヤードからの攻撃に代わり、QB中根のランなどで敵陣29ヤードまで進む。そして、RB加藤のランで26ヤードまで前進し、残りは1分30秒。関学大はタイムアウト後、QB伊豆からWR池永へのパスでファーストダウンを獲得した。ゴールまでは10ヤード。RB野々垣のランで4ヤード進むと、残り45秒、伊豆からWR亀山への6ヤードTDパスが決まった。

30―13で富士通の攻撃に代わり、最後はビクトリーフォーメーション。富士通は時計を進め、2年ぶり2度目の日本一の座を獲得した。

◆富士通・藤田智ヘッドコーチ 結果的に良いゲームができた。キャメロンのパスが良かった。今年はストレスがたまる試合が多かったが、最後(の試合)に(TD)チャンスをもらって決めるのはさすが。今年はチームの総合力で勝てたシーズンだと思う。2年前はワーッとうれしかったが、今回はジワッとうれしい。

◆富士通LB鈴木一郎主将 最後に2本取られたが、「後の祭り」だったと思う。場を荒らさない、ベーシックなディフェンスが、きっちりできた。けっこうどっしりと対応できた。点を取ってもチーム全体で気を緩めずにできた。これまで長い時間、選手をしながらチームを見て、うんちくをうまく言えた。来年はもっとやりたい。

◆富士通QBコービー・キャメロン 今日はオフェンスラインが素晴らしかったので、楽な仕事をさせてもらった。

◆富士通OL勝山晃 QBサックもなく、ランプレーを出せたのが良かった。コミュニケーションを大事にしようと気をつけた。前半は思う通りにプレーできた。

◆富士通WR中村輝晃クラーク 欲を言えば、もう1本取るくらいのことをやって、MVPを取りたかった。今日は、どうやったらMVP取れるのかなと思った。それが、また、目標になった。もっとうまくて、すごい選手になりたい。

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◆鳥内秀晃監督 ロングパス3本のタッチダウンが痛かった。ディフェンスはしっかりしていたし、ランプレーは頑張って止めているのだが、オフェンスが攻めあぐねて勝負どころで成功できなかった。個人技のレベルを上げないと、作戦がはまらないと痛感した。

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◆LB山岸明生主将 勝負どころはたくさんあった。オフェンスで進められるとか、ディフェンスで止められるという場面が何回かあった。悔しい。学生とは違うスピードや視野の広さがある。個々の選手の経験や知識、(いい意味での)ズル賢さが学生とは違う。1人1人のファンダメンタルをつける必要がある。この試合が下級生のいい反省材料になる。

◆QB伊豆充浩 かつてあった外国人への苦手意識はプレー中、考えてなかった。得点を取りたいと気負ってしまった。社会人は強いし緻密。これが実力かな。

【日刊スポーツ 吉池 彰】

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