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第70回ライスボウルの見どころ

 

★2年ぶり2度目の対決。

アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯「第70回ライスボウル」は1月3日午後3時、東京ドームでキックオフされる。対戦は、2年ぶり2度目の出場で2度目の優勝を狙う富士通フロンティアーズと、2年ぶり11度目の出場で15年ぶり2度目の日本一を目指す関学大ファイターズ。2年前の対戦で富士通が33―24で勝つなど、7年連続で社会人が勝利しているが、今回はどうなるか注目される。

★最大の注目は富士通QBキャメロンと関学大守備陣との対決

2年前の対戦では、ケガのためサイドラインにいた富士通QBキャメロンと、関学大守備陣との真っ向勝負が実現する。しかも、キャメロンは15年のジャパンXボウル(JXB)でパナソニックにまさかの逆転負けを喫してしてから1年余りで、1回り成長してライスボウルのフィールドに初登場する。

富士通・藤田HCは「(今季の)キャメロンは爆発(的な活躍)はしていないが、ゲームをコントロールできている」とその成長に信頼を寄せる。「キャメロンへのマークは突破するしかないが、(関学大監督の)鳥内さんの作戦は織り込み済み」と自信をのぞかせる。

対する関学大・鳥内監督は「キャメロンはパスが早いので要注意」とする一方、「JXBでは、よう走っている」と、その足にも警戒する。「一発でTDまで持っていかれないようにしたい」と、OLが抜かれた時の「LBのフォローが大事」とした。

その関学大LB陣の中心は、今年の年間最優秀選手賞チャック・ミルズ杯に輝いた山岸主将。「何らかの策を考え、パスを簡単に投げさせない」と気合を入れた。そして、「パス1点に張りすぎると走られる。LBとしてはどちらも見ながらやりたい」と、鳥内監督同様、キャメロンの走りにも目を光らせる。甲子園ボウルでは、早大QB笹木のスクランブルランにやられる場面があった。山岸は「その反省を生かす」とやすやすとは走らせない構えだ。

2016 Japan X Bowl. Obic Seagulls vs. Fujitsu Frontiers.

Koshien Bowl

★楽しみなLB対決。腕ぶす富士通LB鈴木主将

関学大とおなじく、富士通の主将もLB。37歳のベテラン鈴木は今季、宿敵オービックにJXB4戦目で初勝利を飾り、自信をみなぎらせている。「(IBMとの)準決勝ではLBが足を引っ張った。だから(JXBでは)キーになるブリッツを仕掛けた。ああいう状態に持っていけて、勝利に貢献できてよかった」という鈴木。第4クオーター開始直後、オービックQB菅原にサックを決めて、チームにモメンタムを与えた。

富士通LBには24歳のニクソン、27歳の鉄人・竹内らタレントがそろう。ニクソンは10月1日のパナソニック戦でファンブルリターンTDを決め、20―13での逆転勝ちを演出した。また、竹内はJXBの第2Qでオービックの新エースQBニューハイゼルをサック、チームに流れを引き寄せ、その後のFGに結び付けた。関学大にはQB伊豆、RB橋本という甲子園ボウルMVP2人がいるが、富士通LB陣はJXBを上回る動きで、粉砕を狙う。

2016 Japan X Bowl. Obic Seagulls vs. Fujitsu Frontiers.

一方、関学大LBにも山岸を筆頭に、安田、松本ら力のあるメンバーがいる。そして、勢いに乗るのが甲子園ボウルで値千金のパスインターセプトTDを決めた山本。「ランかと思ったけど、ドンぴしゃで取れた」という感覚が再現できれば、関学大にとってこれほどうれしいことはない。

Koshien Bowl

★鳥内マジックが、学生8年ぶり優勝のカギを握る

関学大・鳥内監督は「今年は試合になるといけるチーム」と、本番の強さに自信を持つ。「2年前は相手を強いと思い過ぎた。今年はゲームプランを考えたらいける」と若い選手たちの躍動を期待した。とくに、ディフェンスについては「2年前より強いと思う」と信頼を寄せる。そして、「『なんや、このディフェンス』というのを前半に見せたい。QBキャメロンのフラストレーションを誘うように持っていきたい」と、鳥内マジックの早出しも予告した。

鳥内監督の狙いは第4Q勝負に持ち込むこと。「そこまで食らいつかないと勝負にならない」と言いながらも、得意のスペシャルプレーの準備にもぬかりはない。すでに「20プレーくらいはできている」というスペシャルプレーが、いつ出るのかも楽しみだ。

Koshien Bowl

★関学大は富士通RBゴードンを止められるか

富士通RBゴードンを、関学大が止められるか否かも勝負の分かれ目になりそうだ。ゴードンは今季リーグ戦では69キャリーで獲得367ヤード、3TDをマーク。JXBでは27キャリー86ヤード1TDでチームの勝利に貢献した。関学大LB山岸主将は「1対1では止められない。1人目が早く行って、2、3人目も行く。11人のプレーヤーでパシュート(追撃)する」と、チーム全員でストップ・ザ・ゴードンを狙っている。

関学大は昨季、立命大RB西村七斗に走られ、甲子園ボウル出場を逃した。山岸は「パシュートが寄り過ぎた。あのシーンからDL、LB、DBが連動することの大切さが分かった」と春からの練習を重ね、最後の大舞台ライスボウルまでチームをけん引してきた。ゴードンに対し、「2年前は気持ちの良いタックルは決まっていないが、今回はタックルできないことはないイメージがある」と、立命大戦、甲子園ボウルを乗り越えてきたことに自信を見せた。

2016 Japan X Bowl. Obic Seagulls vs. Fujitsu Frontiers.

★攻守のラインのデキが富士通の生命線

富士通・藤田HCは「攻守のラインが大事」とチーム全員に基本を徹底する。OLには小林、勝山、斎田、望月という日本代表が並ぶが、「ユニットとして機能しないとダメ」と言い切る。また、ディフェンスについては「足が止まらずに、自分たちのプレーができるかにかかっている」と話す。

「相手の守りはフロントが強いので、互角の勝負をしないといけない」という藤田HC。QBキャメロンがエースWR中村へパスを通すにも、RBゴードンが中央突破するにも、まずはラインの働きいかんになる。「しっかりプランを立てて意思統一する」と、藤田HCは下馬評有利の声に、手綱を締め直した。

2016 Japan X Bowl. Obic Seagulls vs. Fujitsu Frontiers.

2016 Japan X Bowl. Obic Seagulls vs. Fujitsu Frontiers.

★関学大は「泥臭く」

前回のライスボウルを制したパナソニックは「どこよりも泥臭く」と言ってプレーし、僅差の勝利を飾った。関学大も同じ関西勢らしくプレーの「泥臭さ」を強調する。

LB山岸主将は「2年前は(RB)鷺野さん、(QB)斎藤圭さんといった個人技のある人が引っ張っていたが、今年はスターはいない。昨年、リーグ戦で敗れ、その悔しさをエネルギーにやってきた。『全員で泥臭くやっていこう』と言って、はい上がってきた。挑戦者としての気持ちはどこにも負けない」と胸を張った。

今季は春にメキシコに遠征した。「仮想社会人を相手に大きなOLと勝負し、RBとは富士通のゴードン選手をイメージしてやった」という山岸。その経験がライスボウルでの戦いぶりにつながると信じている。「最後まで泥臭くやるのがウチの強み。『FIGHT HARD』のスローガン通りに戦う」と、山岸は来春入社予定の富士通に、学生最後の牙をむく覚悟だ。

【日刊スポーツ 吉池 彰】