ライスボウル2020の見どころ
ライスボウルでは7年ぶり4度目の顔合わせ
アメリカンフットボール日本選手権プルデンシャル生命杯「第74回ライスボウル」は1月3日午後3時、東京ドームでキックオフされる。
7年ぶり9度目の出場で史上最多8度目の優勝を狙うオービックシーガルズと、3年連続最多14度目の出場で19年ぶり2度目の日本一を目指す関学大ファイターズによる7年ぶり4度目の顔合わせ。過去3度はオービックが、2012年38―28、13年21―15、14年34―16で3連勝している。
今回もオービック優位と見られるが、関学大は今季から指揮を執る大村和輝監督の下、何とか下馬評を覆したい。対するオービックの大橋誠ヘッドコーチ(HC)は11年から大会記録の4連覇を果たした名将。復帰初年度での戴冠を目指す。
★甲子園ボウル、JXBのMVP、両エースRBの走りに「全集中」
12月13日の甲子園ボウルは関学大の三宅昂輝(4年)、15日のジャパンエックスボウル(=JXB)はオービックの李卓(25)。両エースRBがそれぞれMVPに輝いた。三宅はキックオフで敵陣21ヤードまでビッグリターン。先制TDを演出すると、第2Qには13ヤードの同点TDランを決めた。さらに、第3Q終盤にはワイルドキャットフォーメーションからのTDランで勝利を引き寄せた。一方の李は第1Qにゴール前1ヤードから、きっちり先制TDランを決めた。そして、第2Qにはパスをキャッチしてからの走りでゴール前7ヤードまで進み、続くTDランでチームに勢いを与えた。
関学大RB陣には三宅に加え、前田公昭、齋藤陸の3年生コンビがいて、縦横無尽に走ってきた。大村監督は「三宅と齋藤にはスピードがあり、前田はスルスルと抜ける。瞬間的なスペースをもらったら、走る」と期待を寄せる。その一方で李の走りを警戒した。「フィジカルアップしており、スペースを与えるとタックルできない。相当やっかいなので、頭を使ってやる」と知恵を絞り、包囲網を敷く構えだ。
試合の行方を左右すると見られる両エースRBの走り。その動きからは目が離せない。
試合のポイントになるライン戦。サイズで圧倒か、動きで翻弄か
両首脳が試合のポイントに上げるのがライン戦。下馬評では、オフェンスもディフェンスも体格で上回るオービックが優勢と見られる。しかし、関学大は秘策を練って立ち向かう。大村監督は「サイズの差がすごい。ランは中を行っても進めない」と言いながらも、「勝機があるとすれば、相手のミスを誘うこと。ライン戦を何とかしないとゲームにならない」と、予想外の動きで相手ラインの翻弄を狙っている。
対するオービックの大橋HCは、JXBでのオフェンスライン、ディフェンスラインの動きを高く評価。その再現を思い描く。「スクリメージの攻防が大事なので、その基本に立ち返る」という。今回のJXBでは富士通の連覇記録阻止がかかっていたが、「5連覇を止めるとかは考えていなかった。目の前のプレーに集中するだけだった」。
JXBでの李が走れたのは「オフェンスライン、タイトエンド、レシーバーがブロックで身を呈してくれたから」という大橋HC。ライスボウルでは、その逆の流れをディフェンス陣に期待している。「三宅君を気持ちよく走らせない。フロントラインでしっかり走路をふさぐ。オープンフィールドになる前に防ぐ」とドッシリ構えた。
学生ナンバーワンQB奥野は有終の美を飾れるか
関学大エースQBとして3年連続出場の奥野耕世(4年)。今回は甲子園ボウルで合計320ヤードのパスを決め、日大を下して、最後の大舞台に立つ。「自分は社会人にはサイズとスピードで負けているが、学生らしく良いプレーをしたい。びびらずに、ドンドンいろんなプレーをする」と出し惜しみをするつもりはない。「短いパスをドンドン通していきたい。流れを持ってくるロングパスも決めたい」とする一方、「疲れはたまっていないので、走れる場面が来たら走る」と持っている能力を全てぶつける覚悟だ。
奥野とパスターゲットのWR陣の絆は強い。鈴木海斗(4年)とは「大学でずっと一緒に1番長くやっているので気が合う」。梅津一馬(2年)は「自分と同じで小学校からアメフトを始め、スクランブルの時に良いところに居てくれる」。そして、糸川幹人(2年)は「投げたら取ってくれる」と信頼を置いている。そんな奥野について、大村監督は「投げる時間を与えれば投げてくれる。プロテクションに時間をかけず、短いパスを通したい」とプレーを思い描く。
対するオービックのDL陣をまとめる副将の佐藤将貴(25)は「ショートパスでディフェンスのラインを無力化しようとしてくるだろう」とピタリ予想。その対策について「ショートパスが増えると思い切りスタートが切れなくなるが、スタートのスピードを緩めたら、相手の思うツボ。スピード、パワーを見せる」と自分たちの力を出し切る考えだ。
圧倒狙うオービックの突破口を関学大は見つけられるか
オービックのRB地村知樹主将(26)は「1月3日は圧倒して勝つのが目標」と力強く宣言。「社会人日本一のチームとして、しっかり臨む」。関学大のディフェンスについては「組織的でスキがない。いろんな動きがあると思うので、ゲームの中で修正し、次のプレーに集中する」。
そう話した地村と佐藤が期待するのが、今季、ノジマ相模原から移籍してきたQBのジミー・ロックレイ(28)。JXBでは合計200ヤードのパスを決めた。佐藤は「フットボールのカギを握っているのはクォーターバック。最後はQBが締めて決まる」と精度の高いプレーを熱望。地村は「いつも通りにプレーしてほしい」と練習の再現を期待している。
攻撃の起点としてRBを走らせ、レシーバー陣へパスを投げるロックレイをいつも通りにさせなければ、関学大の勝機が見えてくる。鶴留輝斗主将(4年)はLB陣のタックルに期待を寄せる。名前を挙げたのは繁治亮依、海崎悠、川崎駿平の4年生3人。「ランプレーを止めてもらいたい。ファンダメンタルとプレーの精度を突き詰めていけば、勝利の可能性はある」と気合を入れた。
(日刊スポーツ新聞社 吉池彰)