ライスボウル 見どころ
3季ぶりの関西決戦になった。
3季連続の日本一をかける 立命館大学パンサーズ ( 関西学生リーグ ) と、9季ぶり出場の松下電工インパルス( Xリーグ西地区 ) 。 02年の関学大から続く学生の 4連勝か、ここで松下が日本のトップリーグの意地を見せるか。 過去、両者は95年に対戦し、松下が試合終了間際の逆転FGで初の日本一に輝いている。
昨季にと比べる、立命に圧倒的な力はない。苦しみ抜いて関西を制した。リーグ第5戦で関学大に 28−30と敗退。 連覇は断たれたかに思われたが、関学がすでに 3敗していた京大に負けた。首の皮一枚で望みをつないだ立命の選手たちは泣いて喜んだ。
8季ぶりの開催となった、関学との甲子園ボウル出場決定戦。2TDを先行されたが、 QB池野からWR木下典への2TDパスで追いつき、 タイブレーク方式の延長を制した。 甲子園ボウルは前半に法大のパスに苦しめられたが、後半にはきっちり対応。6度も攻撃権を奪い取っての快勝だった。
新エースQB池野は、ランもパスも飛び抜けた力はない。昨季までの2年連続日本一を支えてきた高田の後だけに、本人も不安だったという。 しかし、背伸びしない堅実なプレ一で、立派にショットガン攻撃を率いてきた。RBは主将の岸野や前回のライスボウルで独走TDをあげた古川ら 、小さなランナーたちが健在だ。
そして「切り札」木下がいる。日本人離れしたスピードを誇り、DBとの駆け引きも巧み。人を食ったようなチェンジオブペースでマークを外す。競り合いになっても、抜群の球際の強さがある。大学生で唯一、NFLヨーロッパの候補選手に選ばれ、2月には米国キャンプヘ向う 。置き土産とばかりにスーパープレーを見せてくれるだろう。
守備は昨季ほどの力強さはないが、常にボールを狙ったタックルでファンプル誘発を狙う意識が根付いている。
今季の松下は、守備が絶好調だ。 西地区のリーグ戦では5試合中4試合で完封。 決勝ト一ナメントでも.脇坂、山中らの守備ラインが何度も相手攻撃ラインを圧倒。ブリッツ ( 第2、3列からの突っ込み ) も多く仕掛けて 、プレーをつぶしてきた。
強力な守備ラインと練習を重ねているだけに、攻撃ラインも当たり強く、走路をこじ開ける。
機動力も光る。 RBは3年目の石野がエースに名乗りをあげた。ベテランも負けてはいない。 35歳の梗田 (うるちだ) は決勝で持ち前の武骨な走りを見せ、唯一のTD をあげた。 入社1年目、立命とのライスボウルで最優秀選手になった時の輝きは消えていない。 決勝で47ヤードのロングFGを決めたキッカー大田の存在も強みだ。
力は五分と五分とみる。 焦点は、立命の攻撃陣が松下の強力守備にどう立ち向かうか。立命は木下とともに活躍してきたWR長谷川が甲子園ボウルを負傷で欠場。ライスボウルの出場は微妙な状況だ。 甲子園ボウルでは木下の能力で打開できたが、 次は木下以外にも池野が信頼して投げられるレシーバーが出てこないと厳しい。また、 ブリッツなどをどんどん 積極的に仕掛けてくる松下守備の裏をかくプレーを用意できているか。
学生が最近3連勝している要因は、ライスボウルに向けた準備の周到さだ。確かに社会人は練習時間も制約され、戦術両の準備の時間も限られる。 しかし,そう言ってばかりもいられない。
これ以上負け続けると、もはやXリーグは日本のトップリーグとは言えない。
( 朝日新聞スボーツ 部 ・篠原大輔 )